「こどもの虫歯予防ときれいな歯ならびのために」という講座を自治体が開催していたので参加してきました。そこで教わった最重要なことは2つ。3歳までに「むし歯菌をふやさない」と「歯並びがよくなる土台をつくる」ということでした。
こどもの歯をむし歯から守るために
私が住んでいる市では赤ちゃんの出産前・出産後の両親を対象に色々な講座を開催しています。
出産前でいうと両親学級などが代表例です。出産後は育児講座や離乳食教室などなど。
私の奥様は参加出来る講座はどんどん出席していました。
そんな中、奥さんの持っていた育児講座の予定表に気になるものを発見。「こどもの虫歯予防ときれいな歯ならびのために」という内容の講座がありました。
このブログで度々「歯」のことを取り上げている私。こどもの頃から歯にもっと注意をしとけばよかったと今でも悔やむぐらい自分の歯がよくありません。だからこそ我が子を虫歯から守りたい!そう思い、育休中でもあったので私もこの「こどもの虫歯予防ときれいな歯ならびのために」という講座を受けに行くことにしました!
講座当日。
私達夫婦と3ヶ月手前のこどもで講座が開催される施設へ向かいました。
施設内の受付に着くと保育係の方が出迎えてくれました。市の育児講座では講座中はこどもの面倒を見てくれる「保育つき」とのこと。
受付を済ませ、子どもと荷物を預かってもらいました。いざ講座会場へ向かうとまだ全然集まっていない…。奥さんと2人で席に着き、机に置かれた資料をチラ見しながら過ごす。
しばらくするとだんだんと人が集まって来ました。総勢で20名ぐらいでしょうか。大体はマジメそうなお母さん。中にはかなり若くてイケイケ(古い)な感じで本当に虫歯のこと気にするの?みたいなお母さんまで参加していました。やはり我が子にはむし歯になって欲しくないですよね。わかります。
残念ながら男性の参加は私ひとりだけでした。まぁ平日の真っ昼間ですからね。仕方ない。
時間となり、係の方が講座の開始を告げました。
講座の講師は現役の歯科医さんとのこと。ちゃんと歯科名まで書いてあって「あぁ~、あそこの歯医者さんね」と地元の方ならわかる場所にある歯医者さんです。
簡単な挨拶があり、講座がスタート。
以下、この講座で聞いたことを可能な限り思い返してまとめたものです。
こどもの歯についての知識
虫歯や歯並びのことを知るには、まずはこどもの歯について知ることから始まる。
乳歯の生える順序
大体6~8か月で下の前歯から生えることが多い。その後前歯が生えてきて、2~3歳で上下20本生えそろう。しかし生え始めは個人差が大きく、1歳で生えない子もいるのであまり心配しすぎないように。
歯の病気
歯の病気は大きく分けて「むし歯」「歯周病」「不正咬合」の3つ。
歯周病は口の成人病と言われるぐらいなのであまりこどもは掛からない。なので今回は「むし歯」と「不正咬合」についてのお話。
こどもの歯の目標
この講座を通してこどもには「一生自分の歯でおいしく食べること」と「あごや筋肉・骨格にゆがみのない健康な体を持つ」という目標を持たせてもらいたい。そのためには冒頭で紹介した3歳までに心がけることとして
・むし歯菌をふやさない
・歯並びがよくなる土台をつくる
ということを実践していく必要がある。
こどもの虫歯予防について
「むし歯菌をふやさない」ためにはどうしていけばよいのだろうか。
お口の中には細菌がいっぱい
どんな人の口の中にも300~500種類の細菌は存在する。それらの細菌の数はなんと歯垢1mgあたりに10億個もいるのだとか。しかしその細菌のトータル数は個人差があるという。
個人の細菌の組成は3歳頃までに決定する。その数が大人になっても変わらないのだとか。
むし歯と歯周病は口の中の細菌によって引き起こされる
細菌と言っても悪玉菌や善玉菌が存在する。当然悪玉菌の細菌がむし歯の原因となる。
ちなみに
むし歯の原因菌は「ミュータンス菌、ラクトバチラス菌」
歯周病の原因菌は「P.g菌、T.f菌、T.d菌、P.i菌、A.a菌」
とのこと。
上記のことから、つまりは3歳になるまでに口の中の(むし歯の原因になる悪玉菌の)細菌の数を増やさないようにすれば、むし歯になる確率も減るということ。
細菌の感染経路
胎児の口の中は生まれたときは無菌である。出生後、養育者(おもに母親)から感染する。そして感染したむし歯菌は砂糖のある環境で爆発的に増える。
おっぱいやミルクには糖が含まれているので授乳期や離乳期の環境がとても大切になる。
歯垢・歯石は細菌の塊
食事のたびに歯の表面につく「食べかす」が歯垢(プラーク)。その歯垢が積み重なり時間が経ってしまい固くなってしまったのが歯石。これらの歯垢や歯石を放置するとむし歯や歯周病になる。なので歯磨きや歯石除去を行うことが大切。
歯は固そうに見えるが…
歯の表面は食事のたびに溶けたり(脱灰)、戻ったり(再石灰化)を繰り返している。
食事をすると
むし歯菌が「糖」を食べる。代わりに酸がつくられる。酸によって歯がとける。唾液で1~3時間後にとけた歯がもとに戻る。
唾液の役割
唾液の「質が良い」、「量が多い」と溶けた歯がはやく元にもどる。
むし歯の始まり
歯が溶ける量がもどる量より多いと眼に見える穴があく。溶ける量が多くなる原因として
・飲食回数が多い
・唾液の働きが弱い
・歯がやわらかく溶けやすい
・むし歯菌が多い
などといったものがあげられる
むし歯菌を防ぐ生活習慣のポイント
4つのことに気をつける。
虫歯菌の感染を防ぐ
むし歯菌の原因であるミュータンス菌の感染予防をする。
まずは菌を“うつさない”ために注意することとして
・食べ物を口移しで与えたり、歯ブラシを共有しない
・養育者(とくに母親)の口の中を清潔にする
次に菌を“増やさない”ためにすることとして
・離乳時から砂糖に注意する
・歯みがきをきちんとする
食事・間食に気をつける
次に食事や間食についての注意点。
まず「砂糖をとりすぎない」ということが重要。なぜ砂糖の摂りすぎがよくないかは先ほど説明した通り、砂糖によってむし歯菌が爆発的に増えるため。
離乳期は「甘い」だけでなく「酸っぱい」「塩辛い」「苦い」「うまみ」がわかるようになる時期。こどもは本能的に「甘い」が大好き。こどもが喜ぶから・いっぱい食べてくれるからといって甘みばかり与えると味覚の発達も悪くなる(薄味嫌いや野菜嫌いに発展してしまう可能性がある)
飲み物にも注意が必要。炭酸飲料やスポーツドリンク・乳酸飲料・野菜ジュースなどには糖分を含んでいるだけでなく飲み物自体が酸性のものがある。これらは単純に口内を酸性にしてしまい歯を溶かす要因になるので水代わりに与えない方が良い。
次に1日に何回もダラダラと食べないようにする。ようは間食(おやつなど)をなるべくしないようにするということ。
食事(間食を含め)をするとそのたびに歯が溶ける(脱灰)ことになる。唾液によって再石灰化が起きる前に間食をしてしまうと再度、歯が溶けることになるので脱灰がさらに進んでしまう。
とはいえ(大人もそうだが)現代社会で間食を絶対しないというのは難しい。なので3度の主食をきちんとして間食は軽めにするといったコントロールを親がしてあげることが大切。
次の注意点として「寝る前に食べない」よう厳守する。
なぜ寝る前に食べてはいけないかというと、寝ている間は唾液の分泌量がかなり少なくなるから。唾液が少ないということは再石灰化するための機能が果たせないということ。なので寝る直前には基本的に食事をしないほうがよい。もし食べてしまったら歯みがきを忘れずにすること。
また、先ほど説明した通りにスポーツドリンク・乳酸飲料・野菜ジュースなど一見からだに良さそうでも、のどが渇いたからといって特に寝る前には与えないようにする。
母乳やミルクはむし歯になるのか?
結論から言うと母乳やミルクにも糖分が入っているので虫歯菌が存在すれば歯は脱灰し始め、放っておけばいずれむし歯になる。
1歳を超えて乳歯が生えそろってきた際に離乳出来てない時は注意。特に夜中に授乳やミルクを与え、そのまま寝させてしまうのは避けたい。なので、むし歯予防という観点でみれば、離乳を1歳過ぎぐらいまでには出来た方がよい。
今までの患者さんの傾向をみると離乳をしやすいミルク育児のお子さんの方がむし歯の数は少ない傾向だった。
とはいえ飲んだ後にちゃんと歯みがきをしっかりすれば問題ない。
最後に最近はよく大人も言われることだが、良く噛んで唾液をたくさん出して食事をするということ。唾液がたくさん出た方がよいのは今まで説明してきた通り。
プラークコントロール
歯みがきについて。
歯みがきの目的とはなんだろう。それは歯の表面についた細菌の塊=歯垢(プラーク)をとること。
実は唾液が常に触れている部分はむし歯になりにくい。例えば下の前歯など(下の前歯の裏に唾液が分泌される場所がある)。反対に上の前歯や奥歯などは唾液が触れにくく、歯と歯の間などは歯垢がたまりやすいので積極的に磨く必要がある。
こどもの歯みがきは下の前歯が生えたら練習がてら開始する。上の前歯が生えてから本格的に歯みがきを開始。
こどもの歯みがきの回数として最低1日1回夜に子供をひざの上などに寝かせて磨く。
歯みがきは大体どの子も嫌がるもの。まずは口の中にモノが入るのを慣れさせるということで、ガーゼで歯面を拭くだけでも大丈夫。ようは歯面の歯垢が取れればよいので。慣れてきたら小さな歯ブラシでそっとこする。
まれに乳歯の前歯に隙間がないこどもがいる。
前歯同士がくっついて生えているが食事することには問題はない。しかし歯みがきの際には隙間部分に溝があるのでその溝もしっかりと歯みがきするように。
歯みがき嫌いにならないために注意すること。
・口のまわりはやさしく触る。
・歯ブラシをあてるのは歯の部分だけに。歯肉や粘膜は傷つけないように。がんばって磨こう!とする親御さん(特にお母さん)がやりがち。
・ゴシゴシこすらずに、拭き取るように磨く
・義務感にかられて強制的にしない
・スキンシップから心地よさをつくる
・子供用の歯磨き剤を利用するのも1つの手だが、まずは何も付けずに歯みがきしてみる。どうしてもだめな時の奥の手として歯磨き剤をとっておいた方がよい。
お母さんによっては歯磨き剤をつけないと気が済まない!という方もいる。そういう場合はこどもが歯みがきを嫌がらない歯磨き剤を利用するように。ジェルタイプの歯磨き剤や、飲み込んでしまっても大丈夫なものもあるので上手く活用してほしい。
また、歯磨き剤をしっかり吐き出せ、ブクブクうがいが出来るようになるまで「フッ化物」が配合されているものは使用しないようにする。
フッ化物の利用
フッ化物を使用することで歯を丈夫にし、酸に溶けにくい丈夫な歯質を作ることができる。
(筆者が住んでいる)市では3歳まで定期的に無料でフッ化物塗布を行っているので積極的に利用してもらいたい。それ以外にも歯科医院などでもフッ化物の歯面塗布などができる。
自宅では歯磨き剤の説明でも触れたようにぶくぶくうがいや口の中のものをちゃんと吐き出せない場合はフッ化物洗口剤やフッ化物配合の歯磨き剤は使用しない方がよい。
もし使用したいのであればフッ化物の濃度が低いフッ化物スプレーがあるので検討する。
歯みがきをあまりしないのに虫歯にならない人
先生から「歯みがきをあまりしないのに虫歯にならない人」がいるのはなぜか?という情報を教えてもらいました。
確かに長時間丁寧に歯みがきをせず、いつもお菓子ばかり食べているのにひとつもむし歯がない人とかいますよね。たとえば私の奥様とか…。
そのむし歯にならない大きな理由は3つあるのだとか。
- 口の中の(むし歯の原因の)細菌が少ないこと。
- 唾液の量と質がよいこと
- もともと歯の質がよく、丈夫なこと。
これらの中の1つでも当てはまればむし歯になりにくいのだとか。
3つめのもともとの歯の質がよく、丈夫なことは遺伝によって左右されてしまうものらしくどうしようもできないのだとか。しかし1つめの細菌が少ないというのは今回の講座でもあったように3歳までにこどもの口の中の細菌を増やさないようにすれば達成できること。なのでなんとしても3歳まではこどものために頑張ってくださいとのことでした。
ちなみに2つめの唾液の量と質も遺伝的な部分が大きいみたいです。
ただし唾液の量に関しては食事の時にしっかりとよく噛んで唾液をたくさん出して食べること。そのほかに、キシリトールが使用されているガムを噛むことで唾液の量を増やしてあげればよいとか。
ガムなどを噛むときは砂糖入りではなくキシリトールのものにするように注意する。ただしキシリトールガムはあくまでそのガムでは“むし歯にならない”というだけで、むし歯を治したりするものではない。唾液を出すことに意味はあるが本人の唾液の質までは変化させられないので限界がある。
そんな中で歯の再石灰化を促す成分が含まれているガムも存在するのだとか。
そんなガムの中でも大学の実験などでちゃんとした実証データが出ているものが2つあるとのこと。歯科医が特定の商品をおすすめするのも気が引けるがオフレコで…ということで教えてもらいました。
「リカルデント」
「ポスカ」
この2つのガムだそうです。
どちらもおすすめとのことでしたが「リカルデント」の方は牛乳由来成分を使用しているので牛乳アレルギーの方は使用時には気をつけたほうが良いかもしれませんとのこと。
確かに小さいこどもでアレルギー検査をまだしてない段階ではポスカの方が心配せずに済みます。
これらのガムは大人でも有効だということです。歯の悪い私は速攻でメモを取っておりました。
※ちなみにそれぞれ歯科医院専用のも販売されているようです。
・リカルデントは成分が2倍含まれているもの
・ポスカは緑茶成分(フッ素配合)が含まれているもの
内容を見る限り歯科医院用のほうがより効果はありそうです。
が、いかんせん値段もお高い。毎日習慣的に噛むとなるとランニングコストがすごいことになりますよねぇ…。
自身やお子さんの歯の状態に合わせて選択したいところです。
実際に通常版?を購入してみました!
以上でこどもの虫歯予防についてのお話は終了。
つづいて、こどもの歯並びに関しての講座内容まとめです。
こどもがきれいな歯ならびになるために
きれいな歯ならびになるかどうか自体は遺伝的な要素が大きい。しかしそれ以外にも歯並びが悪くなら要因が存在する。それは生活習慣や悪習癖によるもの。
たとえば生活習慣がよくないとあごの発育が不充分(あごが小さく歯が大きい)になってしまう。
また、悪い癖が続くと骨格や軟組織がゆがんで成長・発育してしまう。これらを放っておくとどんな子どもでも不正咬合となってしまう。
ではどんなことに注意して生活をおくればよいのか?
あごの発育を促すのが大切
本来乳歯と乳歯の間は隙間が空いているのが普通。この隙間はいずれ永久歯に生え変わる時のためのスペースなのだとか。つまり乳歯よりも大きな永久歯に生え変わるとその隙間にがちょうど良い感じになくなってくるのだそう。
しかし最近の子どもは隙間なく乳歯が生えている。これでは永久歯に生え変わったときに歯の並びが崩れてきて不正咬合となってしまうのだそう。
この隙間なく乳歯が生えてしまうのは先にも述べた通り、あごの発育が不充分(あごが小さく歯が大きい)なためである。
ではどうすればあごの発育をよくすることができるのか。
あごは赤ちゃんの時にもっとも育つ。特にあごの形は哺乳期に決まっていく。
新生児期の哺乳で噛みこむ力が鍛えられあごが発育していく。なのでたくさん飲ませた方があごが発達する。
ミルク育児の方だと哺乳瓶の乳首の素材や形状などによってあごの発達を促すものがあるのでそれらを試してみるとよい。
先ほども述べたが食事は良く噛んで食べるようにする。
若い世代だと食事の際に飲み物も一緒に用意して、食べ物を飲み物で流し込むように食べる人がいる。これと同じことをこどもにはさせない方が良い。食べ物をよく噛まずに飲み込むとあごの発育が進まないばかりか、唾液の分泌も少なくなり再石灰化が弱くなる。
隙間なく乳歯が生えた場合の歯みがきについて
昔と違って現代はあまり固いものを噛まなくなってしまった。なので昔と比べると乳歯の隙間がせまく生えてしまうこどもが多い。
そうなった場合に注意したいのが隙間の間の掃除。隙間は歯ブラシでは磨き残しが起きやすい(取れない)のでデンタルフロスなどを使用してきれいにしてあげる必要がある。
今は子供向けに色々工夫をこらしたフロスが販売されています。
おしゃぶり・指しゃぶりと歯並びについて
赤ちゃんの指しゃぶりは無意識に行うもので、1歳以下であれば問題ない。しかし2歳以降も続けていると歯科的に問題が出てくることが多い。
同様におしゃぶりの類も安易に「泣き止むから」などといった理由で与えると歯並びに影響を及ぼす。なのでこちらも2歳までには使用をやめるようにしたい。
まとめ
というわけで重要なことはなんとか記載できたと思います。
我が家のこどもはこれから歯が生えてくるので今回の講座を参考に虫歯予防を進めていきたいところです。まずは3歳までなるべくお菓子をあげないように!ここは心を鬼にして頑張りたいと思います。